超円安時代
歴史的な円安ドル高が続いている。家計の負担は膨らむ一方、輸出企業には過去最高益をもたらした。34年ぶりの円安水準は、私たちにとって、企業にとって、日本にとって、「恵み」か「災い」か。その功罪を解き明かす。
大型連休明けの5月7日夕、日本銀行の植田和男総裁は、硬い表情で首相官邸に入っていった。向かい合ったのは岸田文雄首相。約30分にわたる面会を終え、植田氏は記者団の取材にこう答えた。
「最近の円安については日本銀行の政策運営上、十分注視していく」。歴史的な円安が物価に与える影響に、強い警戒感をにじませた。
首相から何を言われたのか。この問いには「いえ、一般的な経済・物価情勢に関する意見交換でございました」。
だが、内実はそうではない。「十分に注視していく」という表現は、事前にすり合わせたものだった。
きっかけは連休前の4月26…