現場へ！ 司法に挑んだボクサー（4）
タイ・バンコクのホテルの会場に、伝説の元ボクサーのメッセージ映像が流れた。2013年11月にあった世界ボクシング評議会（WBC）の年次総会。元ボクサーは拳を振り上げ、連呼した。
「Free Hakamada now！（今すぐ、袴田さんに自由を）」
元世界ミドル級ランカーの米国人ルービン・ハリケーン・カーターさん（享年76）。袴田巌さん（89）と同じ1966年に殺人容疑で逮捕されて終身刑となり、獄中で19年間を過ごした後、再審無罪になった。
音楽家ボブ・ディランさんの代表曲のひとつ「ハリケーン」のモデルで、俳優デンゼル・ワシントンさん主演で映画にもなっている。
映像は08年にカナダで撮影されたもので、日本プロボクシング協会が袴田さんへの支援を世界に呼びかけようと、会場に持ち込んだ。
カーターさんと袴田さん。2人のつながりは40年近く前にさかのぼる。ボクシングジャーナリストの前田衷（まこと）さん（76）が雑誌にカーターさんの再審無罪を伝える記事を書き、それを偶然、東京拘置所内で袴田さんが読んでいた。〈カーター氏よ、ともかく晴れて良かったね。おめでとう！ どうか幸せな日々を故郷で取り戻してください〉
「これは拷問。君は正気を保てるか」
似た境遇の元ボクサーが無罪…
