2027年のNHK大河ドラマが、勝海舟のライバルと言われた幕臣・小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)(1827~68)を主人公にした「逆賊の幕臣」に決まった。小栗は現在の神奈川県横須賀市の横須賀製鉄所(後の横須賀造船所)の建設に尽力しており、市は「功績を多くの方に知ってもらうため、様々な事業を企画したい」と期待を高めている。
市などによると、1853年の米国軍人ペリー率いる「黒船艦隊」の浦賀沖来航後、小栗は日米修好通商条約批准書交換のための使節団に登用されて渡米。帰国後は幕府の外国奉行や勘定奉行などを歴任した。
米国での知見をもとに本格的な造船所と修理施設の建設などを主導したが、大政奉還後に隠棲(いんせい)先の上野国権田村(現群馬県高崎市倉渕町)で、新政府軍との徹底抗戦を主張していたとしてとらえられ、無実の罪を着せられ家臣とともに処刑されたという。
市は例年、横須賀製鉄所の建設に尽力した小栗とフランス人技師ヴェルニーの功績をしのぶ式典を、製鉄所があった米海軍横須賀基地近くのヴェルニー公園(横須賀市汐入町)で開催している。今年は横須賀製鉄所開設160周年で、上地克明市長は「小栗公の生涯とその偉業が、大河ドラマを通じて全国に知られることを大変うれしく思う」と話す。
市自然・人文博物館学芸員で近代建築史に詳しい菊地勝広さん(52)は「横須賀製鉄所の様々な技術は現在につながっており、横須賀発展の礎にもなった。歴史的な偉業が正しく評価されることを期待したい」という。
横須賀市観光協会は小栗ゆかりの地、ヴェルニー公園のガイドツアーを開催中だ。今後の日程は、28~31日の午前9時半~10時半と11時~正午の1日2回で、いずれも先着20人。JR横須賀駅で各回15分前から受け付ける。参加費は500円。「大きな話題になること間違いなしのヴェルニー公園を、たっぷり1時間案内します」とアピールする。問い合わせは同協会(046・822・8256)。
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小栗の墓がある東善寺(群馬県高崎市)住職の村上泰賢さん(83)は横須賀製鉄所(造船所)について「日本産業革命の地といえる」と話す。
横須賀市によると、製鉄所建設が内外から批判を浴びた際、小栗は、この製鉄所は政権が代わっても日本の近代化に大きな役割を果たすことを確信するような言葉を残しているという。村上さんは「私を捨てて、常に国のことを考える、真の武士をめざしていた」と評する。
村上さんは小栗の顕彰事業に力を注いでおり、「新政府の歴史観によって、幕府による近代化の価値や意義が伝わっていない。歴史が確認できるようなドラマに期待したい」と話す。