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会見する日本再生医療学会の岡野栄之理事長(左から2人目)ら=2025年3月19日、横浜市

 国内で年間約8万人の患者に行われている「再生医療」の自由診療をめぐり、日本再生医療学会が、科学的検証に乗り出す方針を明らかにした。有効性などの評価を目的とした自由診療を「検証型診療」と独自に認定し、推進するという。ただ、認定の手続きや検証の方法などは未定で、具体的な制度設計のゆくえが注目される。

 十分なエビデンス(科学的根拠)もないまま、患者の期待を利用する診療は許すべきではない――。日本再生医療学会は3月19日、横浜市で会見を開き、学会の方針を発表した。自由診療のなかに学会として「検証型診療」という区分をつくり、診療を通じた知見から科学的根拠を得ることを目的にするという。

 一方で、根拠よりも利益追求を優先する自由診療を「無検証診療」と名付け、「検証型」と明確に区別する。将来的には、「検証型」を通じて適切だと評価された治療の費用を、民間保険でカバーしてもらうといった新しい仕組みについても議論していく考えだという。

 日本では、患者のためになると医師が判断して、全額自費の自由診療でならば、国に承認されていない薬なども使うことができる。患者の選択肢を広げる側面がある一方、安全性や有効性が確認されていない医療が金銭的利益のために利用される場合もあるとの批判もある。

 厚生労働省によると、2023年度に計約8万人の患者が、再生医療の自由診療を受けている。

 国際的には、未確立な医療の提供は「少数の患者に限られるべき」だとの考え方もあるため、こうした状況には、海外から厳しい目も向けられている。世界の研究者らでつくる国際幹細胞学会(ISSCR)は今年2月、厚労相宛ての要望書を提出し、再生医療に関する規制を強化するよう求めた。

 このままでは再生医療の業界全体の信頼性が損なわれかねず、日本再生医療学会は今回の方針を打ち出した。

課題は制度設計

 ただし、具体的な制度のかた…

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