世界に14座ある8千メートル超の高峰にすべて登頂した写真家の石川直樹さん(47)は、縁あって4年前から香川県三木町に通う。
そこで「首里城を救った男」と呼ばれる人物を深く知ったことで、「写真は記録か表現か」という長年の問いに答えを出せたという。
「本当にすごい人です」。昨年末、三木町の井戸公民館で開かれたフォトワークショップ。日焼けの跡が残る石川さんが語り始めると、受講者ら約30人の視線が集中した。
東京在住の石川さんはその2カ月前、ヒマラヤ山脈のシシャパンマ(8027メートル)に登頂し、世界でも数少ない「14座完全制覇」の仲間入りを果たした。登山中に撮影した写真を披露した後、こう続けた。
「いまSNS全盛の時代で、自分で撮った写真に『いいね!』を押されるとうれしくなる。でも、多くは消費されてすぐに消えてしまう。そんな中でも、芳太郎(よしたろう)さんの写真は強度があり、ずっと残っていく」
「記録の鬼」だった名誉町民
「芳太郎さん」とは、三木町出身の琉球文化研究者で人間国宝、鎌倉芳太郎(1898~1983)。
東京美術学校卒業後、美術教師として赴任した沖縄で、琉球王国時代に花開いた芸術や民俗に魅せられて研究に没頭した。記録ノート81冊や1千枚以上の写真はのちに国の重要文化財に指定された。
石川さんがそんな明治生まれ…