前年優勝の宮城県白石工業高校の選手は開会式前から撮影していた=2025年7月29日午後0時21分、北海道東川町、加藤丈朗撮影

 「仲間とともに力いっぱい、諦めず駆け回り、正々堂々、シャッターを切り続けることを誓います」

 高校写真部の日本一を決める第32回全国高等学校写真選手権大会「写真甲子園」が29日、北海道東川町で開幕した。

 開会式で選手宣誓をしたのは、優勝回数最多タイを誇る沖縄県立真和志高校主将のエスピノーサ・アンジェラ・愛梨さん。2年連続の出場となる。

 参加18校は全国518校から「予選」を勝ち抜いてきた。8月1日までの「本戦」では、機材や撮影地をそろえて、同一条件下で3人1組で競う。

 期間中に2回の審査があり、チームごとにそれぞれ8枚組みの作品を提出する。1回目のテーマは「いま、ここ」、2回目のテーマは「まなざし」となった。30日の撮影の舞台は、美瑛町の田園地帯と上富良野町の市街地だ。

写真甲子園の開会式で、気勢を上げる選手たち=2025年7月29日午後3時46分、北海道東川町、加藤丈朗撮影

 撮影後のトリミングや画像補正はできない。8枚の写真をどう組み合わせ、審査員にプレゼンするかなど、撮影技術に加えて、作品発表に関する総合力も問われる。

 3人それぞれの役割分担も重要だ。例えば、撮影時に1人が被写体に話しかける役割を担えば、自然な表情を引き出しやすくなる。

 顧問の監督は、生徒のカメラに触れたり、撮影の指示をしたりすることは禁止されている。

 手助けできるのは、生徒たちが2時間かけて写真を選び、プリントする「セレクト会議」中の20分間だけ。

 初出場の神奈川県立座間総合高校の佐々木研人監督は「あえて事前の戦略は立てず、生徒たちが感じたままに撮影してもらう」と言う。

 写真家6人が審査する。代表審査委員の野村恵子さんは「初めての場所で限られた時間での撮影はプロでも厳しい。審査を通じて、本人たちが持っている良い点を気づかせてあげられれば」と話す。

 映画「浅田家!」のモデルとしても知られる写真家の浅田政志さんは「写真に対する集中力や本気度がすごい。自分も真剣に写真に向き合わなければと刺激をもらえる」と期待する。

 審査の様子はYouTubeでライブ配信される。

 主催する東川町は1985年、「写真の町」宣言をし、まちおこしの中心に写真を据えてきた。

ホームステイ先の家族と顔合わせをする茨城県立笠間高校の選手たち=2025年7月29日午後4時35分、北海道東川町、加藤丈朗撮影

 写真甲子園に備えて、町職員の半分以上が開幕2~3週間前から、専従で準備にあたってきたという。町民も食事提供やホームステイなどで高校生をサポートする。

 菊地伸町長は「高校生を応援しようと町民も楽しみにしている。写真という文化を大事にする町の姿勢は、移住者を引きつける町の魅力にもなっている」と選手たちを歓迎した。

写真甲子園にあわせて、大学や専門学校の学生による屋外写真展も8月7日まで開催されている=2025年7月29日午前9時54分、北海道東川町、加藤丈朗撮影

 カメラメーカーのキヤノンも、社員10人が参加して大会を支える。全選手に同じカメラとレンズのセット、チームごとに望遠ズームレンズと単焦点レンズも用意する。審査のために印刷する大型プリンターも各校分をそろえる。

 昨年は大会期間中に雨が多かったため、夜までかけて、ぬれたカメラを整備したという。

 参加校は北海道幕別清陵高校、宮城県白石工業高校(前年優勝校)、宮城県仙台二華高校、茨城県立笠間高校、栃木県立栃木工業高校、神奈川県立逗子葉山高校、神奈川県立座間総合高校、東京都立八丈高校、東京都立総合芸術高校、中越高校(新潟県)、豊川高校(愛知県)、静岡県立浜松江之島高校、大阪府立工芸高校、和歌山県立神島高校、大阪府立生野高校、広島県立庄原格致高校、愛媛県立新居浜工業高校、沖縄県立真和志高校。

写真甲子園が開催される東川町=2025年7月29日午前9時16分、北海道東川町、加藤丈朗撮影

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