ハムスターの細胞をヒントに、ヒトの細胞を低温条件でも長生きさせることに北海道大学低温科学研究所の山口良文教授らのチームが成功した。将来、低体温療法や、臓器移植の際に、低温での保存期間を延ばすなど医療に応用できる可能性がある。

 ヒトは、体温が33度近くまで低下すると、全身の震えが止まらなくなり、さらに下がると命の危険にさらされる。細胞レベルでも、4度の低温条件下では1、2日でほとんどが死滅することがわかっている。

 一方、冬眠動物のハムスターの細胞は、4度の条件下でも4、5日は生きられる。3、4カ月の冬眠中は、体温が10度以下にもなる低温状態を5日前後持続させる「深冬眠」とそこから急激に体温を戻す、半日から1日程度の「中途覚醒」を交互に繰り返している。

冬眠中、「中途覚醒」しているハムスター=山口良文・北海道大教授提供

 同じ哺乳類なのに、なぜハムスターはこうした低温に耐えたり、劇的な体温変化をしたりすることが可能なのか。チームは、シリアンハムスターのがん細胞で働いている数千種類以上の遺伝子を、それぞれヒトの細胞で働かせてみた。

 すると、37度で培養していた細胞は、4度に下げて6日間培養すると、ほとんどが死んでしまった。ただ、再び37度に戻すと、生き残った一部が増殖を再開した。こうした処理を3回繰り返し、低温やその後の急激な温度上昇に耐えられる細胞を探した。その結果、生き残った細胞では共通して「GPx4」と呼ばれる遺伝子が働いていることがわかった。

 ハムスターの細胞でGPx4…

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