出向していた教員3人の帰任が決まった奈良教育大付属小学校=奈良市高畑町

 奈良教育大付属小(奈良市)の教諭3人が奈良市立小に出向している件で、付属小を所管する奈良国立大学機構が、当初3年とした出向期間を短縮し、1年となる今年度末で3人が帰任することになった。教諭たちは出向命令の無効確認を求めて奈良地裁に提訴していた。

 教諭の出向をめぐっては、昨年1月、付属小の指導内容の一部が学習指導要領に沿っていないとする調査報告書を大学側が発表。人事の流動性の低さに問題の一因があるとして、正規教員を順次出向させる方針を掲げ、昨年春にベテランの女性教諭3人に市立小への出向を命じた経緯がある。

 3人は昨年6月、出向命令が労働契約法に反するとして、無効であることの確認を求めて訴訟を起こした。大学側は、不適切な事案の是正や再発防止のために現代的課題への対応能力を向上させるとして、出向の正当性を主張していた。

 その後、教員らの組合と大学側が協議を続け、出向者の健康面を考慮し、復帰が必要と認めた場合は新年度から付属小に戻すこと、出向の希望者がいない限り、新年度は出向を実施しないことで合意した。

 その上で、大学は3月13日、訴訟の弁論の準備書面で、「諸般の事情を考慮し、出向を1年で切り上げる方針を決定して、原告に通知した」と明らかにした。

 奈良教育大学教授で、同大組合連合執行委員長の今正秀氏は「大学側の今回の対応は健康上の観点からで、付属小の専任教員を本人や組合との合意なしに出向させた問題は依然残る。子どもが安心して学び、教員が安心して働くことができるように、人事交流を続けるならば丁寧な合意形成に努めるべきだ」と話す。

 同大機構側の担当者は取材に対し、「人事異動の発令前のため、コメントは差し控える」としている。

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