出張朝市に出店する「中津生花店」の中津弘子さん=2024年12月31日午後0時23分、石川県輪島市、有元愛美子撮影

 石川県輪島市の商業施設で開かれている「出張朝市」は31日、年内最後の営業を迎えた。出店する「中津生花店」には、供花や正月の花を買う人が訪れていた。

 「朝市で亡くなった同級生に手向ける花を買いに来ました」と話す客とやりとりしていた店主の中津弘子さんは、夫を能登半島地震の約20日後に亡くした。夫はがん闘病中だったが、地震で一気に体調が悪化したという。「もうご飯の時間だよ。早く帰ってきてよ」。いつも遺影に向かい、話しかけていた。

 7月、中津さんを心配して子どもたちが出張朝市に店を出すよう勧めてくれた。久しぶりに知人に会い、気を紛らわせることができたが、花の売れ行きは不調だった。「食べ物や着る物が一番大切な状況で、花は売れない」と振り返る。

 9月の豪雨も追い打ちをかけた。秋彼岸を前に、たくさん仕入れていた花の大半を処分することになった。

 子どもたちは「大赤字にならなければ続ければいい」と言ってくれている。出張朝市での交流は心の支えにもなっている。

 それでも中津さんの気持ちが晴れることはない。本来の朝市が復活するまで少なくとも2、3年かかるといわれている。現在81歳。「希望も何もない。この苦境から抜けるにはどうしたら良いのかね。新しい朝市で私が店を出すのはもう無理かな」

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