練習する青森東高校の男声合唱団=2024年12月13日、青森市、渡部耕平撮影

 戦争で出征を命じられた若者たちは、どんな思いで故郷から旅立ったのだろう――。戦地に向かう覚悟が歌詩につづられた曲「鐘鳴りぬ」。青森東高校の男声合唱団は、歌詩の重みを厳粛に受け止め、歌い上げようと励んでいる。披露するのは、22日の青森県声楽アンサンブルコンテスト。重厚な歌声で、平和への願いを届けるつもりだ。

 男声合唱団は、音楽部の男女のうち、男子の12人でつくった。コンテストでは女声や混声の団体が多いなか、学校の団体で唯一の男声合唱として出場する。

 取り組んでいる曲は、男声合唱組曲「わがふるき日のうた」からの2曲。いずれも、詩人の三好達治の詩に、作曲家の多田武彦が曲をつけた作品だ。そのうちの1曲「鐘鳴りぬ」は、戦地に赴く若者の決意が歌詩に込められている。

 「いざわれはゆかん」「ゆきてふたたび帰りこざらん」「つひの別れぞ」――。

 歌詩には死を覚悟した悲壮な言葉が並ぶ。しかし、生徒たちはこの曲に挑むことにした。「2025年は戦後80年。節目の年を前に、戦争に思いをはせようと思ったのです」と、顧問の宮本由紀乃先生は話す。

 生徒たちは、古語が含まれる歌詩を丁寧に読み込んだ。戦地に向かう若者に対して抱いた感情は、勇ましさではなく、切なさだった。

 白取蒼太(そうた)さん(1年)は「戦争に行くために自分を奮い立たせる感じが描かれている。けれども、最後に家族と別れるとき、『自分のことは忘れてもいい。幸せにすごしてほしい』と、一番に願ったのではないか」と、思いをめぐらせる。

 「鐘」を、軍用列車の出発の合図ととらえたのは、小笠原圭亮(けいすけ)さん(1年)。「駅で家族と別れる場面が浮かびました。戦死する覚悟はできているようで、実はできていない。ふるさとに帰ってきたいけれど、帰れない。とても重い意味を感じながら歌います」

 音楽リーダーの高野悠太郎さん(2年)は、大きな「鐘」の音色が遠くまで鳴り渡るように、男声合唱ならではの厚さと深みのある歌声を響かせたいと願う。「故郷の恋しさや家族を愛する気持ちを、荘厳に歌いたいです」

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 青森県声楽アンサンブルコンテスト(県合唱連盟、朝日新聞社主催)は全国大会の選考を兼ね、22日午前10時から青森市のリンクモア平安閣市民ホールで開かれる。入場料は一般1千円、高校生以下500円。出場は2人以上、16人以下の団体で、中学生、小学生、高校生、一般の順に演奏する。

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