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「なぎチャイルドホーム」で過ごす子ども=2025年5月26日、岡山県奈義町、伊藤進之介撮影

 まちの生き残りをかけ、子どもを生み育てやすい社会づくりに奔走する自治体がある。岡山県の山あいにある奈義町だ。2019年、1人の女性が生涯に生む子どもの見込みの数を表す「合計特殊出生率」が2.95(全国平均1.36)まで回復し、「奇跡のまち」と呼ばれてきた。そんな奈義町も近年は出生率が落ち着いている。子どもと町の未来のため、いま町が考える戦略は何か、訪ねた。

 奈義町が子育て支援の充実に大きくかじをきったきっかけは、23年前の02年。周辺自治体との合併の是非を問う住民投票で合併しない道を選んだ。

 それ以来、子どもを生み育てやすい町にしようと、切れ目のない経済的支援を用意してきた。医療費や給食費の無償化、保育料の負担軽減、出産祝い金10万円、在宅育児に毎月1万5千円、高校生の就学支援で年額24万円の支給、町独自の奨学金……。議員定数削減などで財源となる約1億6千万円を捻出した。

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「なぎチャイルドホーム」=2025年5月26日、岡山県奈義町、伊藤進之介撮影

 精神的な支援にも力を入れる。町の中心部にある「なぎチャイルドホーム」は、町民同士が子育てを支え合う拠点だ。保育士や保護者が当番制で就園前の親子と触れ合う自主保育や、子どもを短時間預かってほしいときに利用できる一時保育もある。小中学生の居場所もあり、地域の大人も含めると月700人ほどがチャイルドホームを訪れる。

■子育て、本来は楽しいもの…

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