2月4日夕、新潟県最北部にある村上市の集落。自宅にいた川崎愛美さん(36)に陣痛が来た。
雪が降る中、夫・忠則さん(38)の運転で自宅を出た。向かった先は車で20分ほど離れた、市中心部のJA新潟厚生連・村上総合病院。「北の砦(とりで)」と呼ばれ、県の災害拠点病院にも指定されている。県北部住民にとって重要な役割を持つ。
「日付が変わるころには生まれそうです」
うわずった声の忠則さんから、記者のもとに連絡が来たのは、忠則さんが病院に着いた直後だった。出産直前の1月末に川崎さん宅を訪れ、夫妻から出産時の取材を快諾してもらっていた。記者は、撮影スタッフとともに新潟市内から車を走らせた。
午後10時すぎ、記者と病院前で落ち合った忠則さんは、緊張した表情で陣痛室へ入った。4年前に1人目の長女が生まれたときはコロナ下で立ち会えなかった。2人目の今回こそは力になりたい。取材に、そんな思いを語っていた。
慌ただしくなる分娩室
記者が分娩(ぶんべん)室の…