田植え機を運転する中田優司さん。奥に見えるのは函館山だ=2024年5月26日午前10時42分、北海道七飯町鶴野、野田一郎撮影
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 北海道南部の函館山を望む水田地帯で、田植えが最盛期を迎えている。

 函館市、北斗市、七飯町にまたがる2500ヘクタールに及ぶ渡島(おしま)平野土地改良区では昨年6月17日、北海道電力・七飯発電所(七飯町、水路式)の放流設備の故障で給水が突然止まり、水がかれる田が続出し、米農家たちは水の確保に苦労した。新たな放流設備が今年4月に完成し、現在は順調に水が来ている。

 「このあたりは水がれの影響が少なかったが、大変な思いをした農家が多かった」

 26日に田植えを始めた中田優司さん(71)は振り返る。七飯町鶴野にある7ヘクタールの田で道南生まれのブランド米「ふっくりんこ」を栽培する。昨年は猛暑の影響で米の粒が白く濁り品質が落ちた。「暑い夏が続いているので、今年は田に水を流しっぱなしにして水温を低く保ってみようと思う。そのためにも豊富な水が必要だよ」と語った。

 発電所の灌漑(かんがい)放流設備は毎秒4・5立方メートルを放流してきた。昨年の給水停止の際は北電が応急ルートを開くなどしたが、水が行き渡らない地区では順番を決めて田に水を引く「番水(ばんすい)」を実施してしのいだ。北電は新たに毎秒4・5立方メートルを放流できる設備を整備し、改良区が5月8日から本格的に通水を始めた。農家はトラクターで水田の土を平らにする作業をして田植えに臨む。田植えは6月上旬まで続く。(野田一郎)

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