自律型運行制御システムの実験車両。先頭部には、線路上の障害物を検知する装置が取り付けられている=2025年5月13日午後1時33分、東京都国分寺市、細沢礼輝撮影

 列車自らが線路上の障害物を見つけて緊急停止したり、取り除いた後に安全を確認して運転再開したりできる「自律型列車運行制御システム」を、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が開発した。鉄道各社が実現を急ぐ「自動運転」を見据え、運行管理や踏切、信号設備も列車側が自動制御することで、ローカル線などの省人化をめざす。2040年ごろの実用化を見込んでいるという。

 鉄道総研によると、自律型システムは、カメラやセンサーによって線路内の支障物を検知する技術や、線路内や沿線、車両の情報を集約して車上で運行判断する技術、無線通信で踏切やポイントを直接制御する技術など五つの要素技術で構成される。各要素を採り入れた試験車両の走行実験が5月中旬、東京都国分寺市内にある鉄道総研の実験線で報道公開された。

 試験車両は先頭部にカメラと9個のセンサーからなる前方監視装置を搭載。車上から踏切の遮断機や線路のポイントを制御しながら自動走行し、線路内に置かれたマネキン人形を「支障物」として検知すると、緊急停止した。マネキンが取り除かれると、運転再開できるかどうかを自動判断し、再び動き出した。

 通常の鉄道運行は、列車は運転士が動かし、運行管理は指令室、ポイントや踏切といった地上設備は駅機器室などがそれぞれ管理している。自律型システムが実現すれば、無人運転に加え、指令室の省人化や機器室の削減につながる。

 鉄道総研の担当者は「自律運転による省力化は、運転本数の少ない地域鉄道でより大きな効果を発揮するはず」と話している。

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