あの戦争がなければ――。東京都の渋谷区立松濤美術館「黙然たる反骨 安藤照(てる)」展に強くそう思う。
1892年生まれの彫刻家の活動を網羅的にたどる初の展覧会で副題に「忠犬ハチ公像をつくった」とある。その初代ハチ公像(1934年)は44年に金属類回収令の対象となり、姿を消している。
渋谷区内の安藤のアトリエにあった多くの重要作も45年の空襲で失われ、本人も落命している。現存作品が少なく、紹介の機会も限られていた。
早くから帝国美術院展覧会の審査員を務めるなど評価と期待は大きく、残された作品は見応えがある。
作風には変化があり一概には…