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「有楽町かきだ」大将兼オーナーの蛎田一博さん
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 インバウンドのにぎわいが戻る中、日本の食文化を代表するすし業界がひそかな悩みを抱える。職人不足だ。飯炊き3年、握り8年といわれる下積みの長いイメージが敬遠されるらしい。そこへ新進の経営者が頭角を現した。「経験不問」で人材を獲得、最速2週間で板場に出られる職人もいるという。どのように育てているのか。

 東京の新宿駅から徒歩数分。高層ホテルの19階に「有楽町かきだ」(120席)はある。昨夏開店した。時間帯によって90分か120分で税込み1万1千円か1万4千円の実質食べ放題。週末は1週間前の予約が必要な日もある。

 業界を取り巻く環境は厳しい。日本フードサービス協会の推計によると、市場規模はインバウンドの本格化に伴い2013年から増え始め、コロナ禍でいったん落ち込んだが、日本橋や銀座、浅草など外国人客も多い地域では、活気が戻っている。一方で、職人を含む従業者数は直近の調査で25万4523人(2021年経済センサス)と、5年前の調査から800人減。とくに個人店は後継者難や人材難で、廃業する店が後を絶たないという。

 しかし、有楽町かきだは違う。新宿出店の際、SNSで5人の募集をかけると、すぐ希望者が集まった。途中退職者は出るが、募ればまた来るという。その理由は板場の職人たちの採用方法にある。

 「飲食業経験は不問です。だ…

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