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 東京都板橋区にある築40年超の7階建て賃貸マンションで、家賃を2倍以上にするという通知が突然、住民に届いた。次にはエレベーターが「修理中」となり、使えなくなり、4割の住民が退去したり退去を決めたりする事態になった。

 中国系とみられるオーナー企業側は6月中旬、値上げを撤回する内容の文書を住民に出したが、何が起きているのか。民泊事情などに詳しい阪南大の松村嘉久教授(観光地理学)に聞いた。

 マンションのオーナーによる家賃の大幅な値上げやエレベーターの停止は、住民を追い出すためにとった手段で、目的は民泊営業に使う部屋を確保するためだった可能性がある。

  • 突然、家賃2.6倍の通知 マンションのエレベーターは「使用中止」

 民泊営業は、コロナ禍後のインバウンド需要の拡大とともに増加している。築年数の古い賃貸マンションやその土地を買い取り、民泊に転用する事例は多い。所有者が住民に退去を求めることになるが、その際、強引な手段を使ってでも民泊営業に乗り出したい理由がある。

マンション、賃貸と民泊で利回りの違い

 同じマンション物件でも、賃貸と民泊の利回りはまるで違う。板橋区の事例では家賃約7万円に対し、民泊の宿泊料は1泊2人で2万5千円と聞く。民泊には清掃などのコストもかかるが、それでも利回りは民泊の方が数倍高い。

 観光客にとっても、ホテルほど騒音に神経質にならずに済み、調理もできるなど自由度が高い。板橋の事例は価格が高いと思うかもしれないが、民泊の管理は緩いことが多く、多人数で宿泊して割安にすることもできてしまう。

 特に民泊営業者における中国系企業の割合が高まっている。大阪市の国家戦略特区法に基づく「特区民泊」の認定物件は、昨年末時点で5587件。そのうち少なくとも4割超の約2300件の営業者や営業企業の代表が、中国系の名前だったことが調査でわかった。

中国本国の感覚で強引な手段をとったか

 中国では物件を運用する側の…

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