宮崎県弁護士会(山田秀一会長)は、校則について県立高校と宮崎市立中学校にアンケートを実施し、その分析結果を1日に発表した。ほぼすべての学校が見直しに取り組んでいたが、制服や髪形を男女別に定めるなど、合理性が疑われる校則がいまだ多いと指摘。子どもの人権を尊重した改定を進めるよう県教委などに提言したという。
アンケートは弁護士会内につくった校則PT(プロジェクトチーム)が2023年9月に実施。県立高全41校(定時制・通信制の回答を含む延べ数)、宮崎市立中全25校から回答があった。校則見直しについては、もともと校則が緩やかな定時制高を除く全校で、21年1月から23年6月までの間に何らかの形で行われていた。
また、見直しにあたっては、高校36校と全中学校で、生徒会との連携やアンケートなどで「生徒の意見を聞いた」とした。性的マイノリティーやさまざまなバックグラウンドの子どもへの配慮の視点についても高校36校と中学25校が「検討して改正」、または「改正に向け検討中」と答えた。弁護士会はそうした姿勢は大いに評価できるとした。
その一方で、各校から提供された校則などには、人権に照らして問題があるものや、個性・多様性が尊重される時代にそぐわないものが一定数あり、見直しは小幅にとどまっている状況だ。
たとえば、標準服(制服)について、「男子は学生服、女子はブレザー」と男女別に規定した学校が高校18校、中学11校あった。頭髪についても、「男子は短髪」など高校18校、中学15校が男女別に定めていた。
提言では「性的マイノリティーの子どもが男女別の規制に従うことに大きな苦痛を感じている可能性があり、学習権が損なわれる状況も懸念される」と指摘。男女別の服装・髪形の規定を続けることは「男性はこうあるべき、女性はこうあるべきだという固定観念を学校が発信することにもなりかねない」とも訴える。
下着の色や柄について、「白・黒・紺・グレー・ベージュの単色」「ワンポイントまで」など何らかの規制も高校17校、中学20校にみられた。これについても、「極めて私的な領域である下着についてまで学校が制限する合理性を説明することは困難」と疑問視した。
スカート丈、ベルトの色や形、髪の長さ、眉毛、靴下などについても細かく定めた学校が多かった。校則を見直したという学校の中には、靴下や下着の色を「白だけとしていたのを黒・紺も可とした」という例もみられたが、「そもそも色指定を含む細かい規制が必要なのか」とさらなる検討を求めた。
生徒の活動についても、アルバイトの許可制や立ち入り禁止場所の指定など学校外での行動規制や、政治活動を禁止した校則がみられた。こうした規定について、「一律に制限することが許容されるものなのか、検討を深める必要がある」と指摘する。
1日に記者会見した校則PTのメンバーは「その規則がなぜ必要なのかが検討され、子どもたちに説明できる合理性があるかどうかが一番大事と感じる」「学校でも憲法の人格権や子どもの権利条約について学び、それに照らして規制が必要か検討してほしい」などと語った。
ただ、多くの学校が継続して校則の見直しを進めると回答しており、「生徒も教職員と一緒に考えて、ぜひ各学校で自主的な見直しを進めてほしい」と今後に期待した。(後藤たづ子)
服装や髪形の「細かい規制」がある学校数と具体例
【下着】(宮崎市立中20、県立高17) 「白・黒・紺・グレー・ベージュの単色」「ワンポイントの大きさは最大でも8センチ四方程度」「目立たない色(単色)」「無地」「派手な色・絵・文字は禁止」
【スカートの丈】(中23、高30) 「立ち膝(ひざ)で裾が前後左右とも床につく」「膝が隠れる程度」
【ベルト】(中22、高25) 「黒」「黒紺茶の無地」「デザイン性の高いものは不可」「幅3~5センチ」
【髪の長さ】(中24、高33) 「(前髪について)眉にかからない」「(後ろ髪について)襟にかからない」「肩につく場合は結ぶ」
【眉毛】(中23、高32) 「自然な状態に保つ(眉間を整える程度は可)」「抜く、そる、切る等を禁止」「必要な場合は保護者が申請して学校長の許可を得る」
【靴下】(中25、高35) 「白・黒」「白・黒・紺・グレー」「無地」「ワンポイントまでは可」「くるぶしが隠れる長さ」「くるぶしより10センチ程度上」
【コート類】(中22、高25) 「原則着用しない」「女子のみ冬期間指定コートの着用を認める」
※宮崎県弁護士会校則PT調べ