ミューラルの関口愛弓、村松祐輔に機械について説明するシャスターの曽原茂昭社長(右)=石川県かほく市

 2013年に設立された東京発のコレクションブランド・ミューラルは、繊細かつ絵画的な刺繡(ししゅう)をあしらった服で知られる。そのデザインを独自の技術で支える工場が、石川県にある。昨年秋、デザイナーの村松祐輔、関口愛弓とともに訪れた現場で見えてきたのは、刺繡の世界の奥深さと産業全体が抱える課題だ。

こんなんできる?と聞かれたら

 ガシャンガシャンという音が絶え間なく響き、幅15メートル、高さ4メートルほどの巨大な機械が、布地に複雑な模様を描いてゆく。

 ここは、石川県かほく市の海岸沿いに工場を構えるシャスター社。スタッフはわずか5、6人だが、刺繡業界では大手の方だ。

 この日作っていたのは、ミューラルの25年春夏コレクションのためのレース。植物を思わせる刺繡は、細いラメ糸とレーヨン糸、3ミリの極太コード糸が多色版画のように重なり合い、平面でありながら奥行きを感じさせる。コード糸を使った刺繡には独自改良したアジャスターが必要で、再現可能な機械を有するのは、「おそらく国内で1社のみ」という。

 太さも材質も異なる複数の糸…

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