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アナザーノート

アナザーノート 木村裕明記者

 創業138年。企業の経営者や役職員の見学が絶えない老舗がある。

 1886(明治19)年に金物問屋として創業した「カクイチ」。長野市に本社を置き、従業員は約270人。年商250億円の中小企業だが、見学の受け入れ件数は年に100件を超す。

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 社員の平均年齢は46.7歳と高めだ。5年前まで紙やファクスが飛び交うアナログな中小企業だったが、創業家出身の5代目社長、田中離有(りう)氏(62)がDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に進めた結果、わずか数年で企業文化が大きく変わったことで注目を集め、そのノウハウを学ぼうと企業人が次々にやってくる。

 見学に訪れる企業は、規模も業種も様々。不祥事が露見した大企業の役職員が、組織風土を変えるヒントを探ろうと足を運ぶこともある。さながら「カクイチ詣で」の様相だ。

 DXは、デジタル技術を活用して組織や企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立することと定義されている。混同されがちだが、IT化やデジタル化は業務を効率化してDXを実現するための手段であって、DXとは異なる。デジタル化には取り組んでいるものの、なかなかDXが進まないと悩む中小企業が少なくない中で、企業文化まで変えたカクイチ流のDXとはどんな変革なのか。

 がぜん興味がわいて私もカクイチを訪ねると、社長の離有氏や多くの役職員が惜しみなく改革手法を紹介してくれた。

 カクイチは事業領域が広く…

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