町工場のイメージを変えたい――。創業70年超の工場経営に加わった夫は、新たな試みを始めたが、理解を広げられずにいた。救ったのは工作好きの妻。あるものの活用で様々な引き合いが来る工場に姿を変えた。
高さ10メートルほどの吹き抜けの壁は、コンクリート打ちっ放しで、道路側はガラス張り。大人の背を超す観葉植物に、革張りのソファが並ぶ。カフェ風のこの場所は、3年前まで、部品や道具が雑然と積み上がる工場の作業場だった。
大阪市西区の九条地区は、かつては船大工の拠点だった。その名残で、鉄を加工する町工場が多く残る。1951年創業の田村商店もその一つだ。鉄筋や鉄板、ボルトなど建築資材の鉄部品を中心に製造している。
作業場を改装したのは、専務の田村友紀晃(ゆきてる)さん(41)。鉄鋼商社を2013年に退職し、家業に携わり始めた。
リノベを提案された従業員の反応は…
生まれ育った町工場は、学校から帰れば、おっちゃんたちが「おかえり」と声をかけてくれた温かい場所。一方、町工場に「3K(きつい、きたない、危険)」のイメージも強く持っていた。「奥さんや娘たちにかっこいいと思ってもらえる職場にしたかった」
受注は多いのに、工場にはさ…