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 犯罪の被害者や遺族に国から支給される犯罪被害者給付金について会計検査院が調べたところ、加害者に請求するべき損害賠償の手続きを警察庁が放置していたことが分かった。検査院の調査では、加害者側が資産を有する可能性もあったが、手続きの放置で一部は時効にかかる恐れがある。

 犯罪被害者給付金の制度は1981年に始まった。犯罪被害で亡くなった人の遺族や障害を負った被害者に、国が給付金を出す。国は加害者に対して損害賠償請求権を持つ。

 検査院が2018~22年度までに支給した1838件(計約48億円)を調べたところ、全件で帳簿などをとっておらず、国の債権管理簿にも計上されていなかった。警察庁は検査院に対し、加害者の多くが土地や車などの資産を持っておらず、債権回収の見込みがないとして管理していなかったと説明したという。

 検査院が1838件のうち、17都県警が作成した821件(計約21億円)の資料を確認したところ、78件の計約2.3億円については加害者が資産を有する可能性があった。例えば加害者から暴行を受け、被害者が国から704万円の給付を受けたケースでは、警察本部が作成した資料に加害者に1500万円の貯蓄があるとの記載があった。

 加害者が資産を有する可能性のある78件の計約2.3億円のうち、38件の計約1億円分は今年3月末時点で、加害者が時効を主張できる状況という。

検査院OB「加害者の責任逃れの手助けに」

 検査院は「警察庁は国の債権管理に関する理解が不十分。見直しが必要だ」としている。

 会計検査院OBの星野昌季弁護士は「回収の見込みがないからと、加害者に損害賠償請求しなくて良いという話ではない。適切な賠償金請求権行使の機会が失われ、加害者の責任逃れを手助けしているともとれる。国の債権を国会にも報告しておらず、問題だ」と話す。(座小田英史)

加害者への請求、40年超に数件 給付金は増額

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