2月に配信した連載「現場へ! 豚の『福祉』に向き合う」を執筆した記者が、今回やこれまでの取材を通じて感じた畜産の現場と行政の課題をつづります。
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廃業間近の養豚場から保護され、ひかりと名付けられたそのメスの豚は驚くほど人なつこく、高い社会性を持っていた。昨年12月、NPO法人アニマルライツセンター(ARC)が千葉県内に設けた豚の保護施設を取材した際に出会った。
放牧場に立ち入ると、真っ先に駆け寄ってきたのがひかりだった。体重200キロ超。かなりの迫力だ。私が後ずさりすると少し距離をおき、観察するようにじっと見つめてきた。楽しませてくれる存在ではなさそうだと判断したのか、今度は仲間の豚のほうへと走っていった。
施設では大地(オス)、友(メス)と共に3頭で過ごしている。ARC代表の岡田千尋さんによると、ひかりは大地と友のケンカを仲裁したり、友がぽつんと1頭でいると遊びにさそったり。「相手を観察して、自分の行動を決めている」という。
エアコン完備の豚舎との行き来は自由。放牧場では土を掘ることも、泥を浴びることもできる。ひかりたちは、豚本来の習性を十分に発揮できる環境を満喫していた。
身動きできない檻で約114日間
他方、日本の一般的な養豚場…