近代日本の礎となった歴史遺産への関心が高まっている。観光や町づくりへの活用が期待されるが、都市部では全面保存が難しく、開発側と現地保存を求める市民との対立も表面化し始めている。
関門海峡を挟んで本州と九州を結ぶ北九州市の門司港エリアは、九州に張り巡らされた鉄道網の起点でもある。その要となった初代門司駅の遺構が昨年、現在のJR門司港駅のすぐ近くで見つかった。機関車庫や駅舎外郭の石垣などで、保存状態は良好という。市が複合公共施設を建設するために発掘していた。
初代門司駅の開業は明治24(1891)年。国内の伝統技術と新来の西洋技術が共存する貴重な物証と評価され、他の鉄道遺産とまとめてユネスコの世界遺産をめざしてはどうか、との声もある。
ところが保存をめぐって問題が起きた。遺構の一部を切り離して移設するという市の方針に、「もっと説明を」「市は急ぎすぎ。全部発掘してからでいい」といった反発や現地保存を求める声が上がったのだ。市民の有志は「保存を求める会」を結成、専門家でつくる日本イコモス国内委員会や各学会も保存要望を出した。
市議会では3月、遺構の移設…