日本人漁師に救助された姉のガリーナさん(左)と妹のリュドミラさん(右)、中央はアンドレイさん=樫本真奈美さん提供

 『舟 北方領土で起きた日本人とロシア人の物語』(皓星社)という題名の小説が出版されたのは、昨夏のことだ。ソ連の占領後、歯舞群島の志発島で、小舟で沖に流されたロシア人の子供を日本人漁師が救った出来事を基に、シベリア西部に住む脚本家(64)が書いた。

 最近、小説を日本語に訳した同志社大学講師の樫本真奈美さんを介して著者とメールで直接やりとりができたので、このあまり知られていない出来事を取り上げたい。

 ウクライナ侵攻後に日本との関係が悪化したロシアで、北方領土問題に触れる本を書くのは微妙な問題をはらむため、脚本家氏はマイケル・ヤングの筆名を使っている。

 出来事は1947年に起きた。極東の沿海地方から移住したロシア人一家のきょうだい3人と友だち1人が、日本人住民の手こぎの小舟で岸を出て沖に流され、遭難の危機に直面してしまう。

 ロシア人側が発動機船で救助を試みたが、嵐がきた海で操船ができない。そこで操舵(そうだ)にたけた日本人漁師が危険を冒して強風と高波のなかを捜索に向かい、4人を救い出したという。

 脚本家氏は、救助されたきょ…

共有
Exit mobile version