【動画】北朝鮮が打ち上げた衛星が爆発した瞬間とされる映像=ロイター、韓国軍

21日、竣工(しゅんこう)した平壌の朝鮮労働党中央幹部学校で演説する金正恩総書記。朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信

 北朝鮮の朝鮮中央通信は28日未明、同国の国家航空宇宙技術総局が27日に軍事偵察衛星を新型の運搬ロケットに載せて打ち上げたが、失敗したと報じた。

 同通信によると、北朝鮮・平安北道の「西海衛星発射場」から衛星を載せたロケットを打ち上げたが、1段目の飛行中に空中爆発したという。「新しく開発したエンジンの動作の信頼性に事故の原因がある」と伝えた。初期段階の結論としており、「その他の原因となりうる問題点も検討する」という。

 同通信の報道に先立ち韓国軍は27日夜、「北朝鮮が主張する軍事偵察衛星」が発射された、と発表。同日午後10時44分ごろに黄海の南の方向へ発射されたが、直後の同10時46分ごろには北朝鮮側の海上で多数の破片が探知されたという。韓国軍も、空中爆発したとの見方を示していた。

 林芳正官房長官は28日午前の記者会見で、27日夜の北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いた発射について、衛星の打ち上げが失敗したとの見解を示した。「数分後に黄海上空で消失し、宇宙空間への何らかの物体の投入はされていないと推定される」としたうえで、「総合的に勘案すると、発射は衛星打ち上げを試み、それに失敗したものであったと認識している」と述べた。

 林氏は「今般の発射を含む核・ミサイル開発は関連する国連安保理決議に違反するのみならず、我が国および国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できない」と述べ、北朝鮮を強く非難した。今後も北朝鮮が衛星打ち上げを目的とする発射を強行する可能性があるとして、「引き続き米国、韓国等とも緊密に連携しつつ、必要な情報の収集分析を行うとともに、警戒監視に全力を挙げていく」と語った。

 海上保安庁は28日午前6時53分、発射から数分後に黄海上空で消失したものとみられると発表。失敗の可能性を含めて、詳細は日米韓で分析中とした。

 北朝鮮は2度の失敗を経て昨年11月に初の軍事偵察衛星を打ち上げた。米軍などの動きに対する監視能力を得るため開発を進めており、ロシアから技術的な支援も受けているとみられている。今年中に3基を追加で打ち上げる方針を示しており、原因究明を経て改めて打ち上げをめざすとみられる。

 米インド太平洋軍は27日、北朝鮮が同日に弾道ミサイル技術を用いた発射を行ったとして、「緊張を高め、地域内外の安全保障の状況を不安定化させる危険がある」と批判する声明を発表。米国務省の報道担当者も朝日新聞の取材に対し、「複数の国連安全保障理事会の決議に違反する」と発射を非難した。

 北朝鮮は今回、5月27日午前0時~6月4日午前0時の間に「衛星ロケット」を打ち上げると、27日未明に日本に通知していた。(ソウル=稲田清英、ワシントン=清宮涼)

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