北朝鮮の朝鮮中央テレビが4月、新たな歌謡曲「親しいオボイ」の映像を公開した。金正恩(キムジョンウン)総書記を呼び捨てにして親しみやすさを演出したとされる歌詞や、出演者が親指を立ててサムズアップ(いいね)のポーズをとる姿などがSNSなどで話題になった。音楽を国内統制の手段に使う北朝鮮の「音楽政治」とはどういうものなのか。
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オボイとは、北朝鮮で最高指導者を指す場合によく使われる、アボジ(父)とオモニ(母)を掛け合わせた言葉だ。親しいオボイの映像は4分足らず。軍人から工場労働者、高齢者まで様々な北朝鮮の人々が登場し、「歌おう金正恩、我々の領導者」「誇ろう金正恩、親近なる我々のオボイ」などと歌い、金正恩氏をたたえた。
また、映像には、ソニーやローランド、コルグとみられる日本メーカーの楽器なども映り込んでいる。厳しい経済制裁下にある北朝鮮だが、日本製品が入っている実態も垣間見える。
脱北者らの証言によれば、北朝鮮は政治宣伝の手段として、掲示物や講演・学習会と並んで芸術を利用してきた。市民に感動を与え、政治的な主張を受け入れやすくするためだ。北朝鮮各地の主な職場や朝鮮労働党、行政組織には音楽隊が置かれ、政治行事に加えて、田植えなどでも演奏活動を行うという。
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