【岩手】運転手の労働時間の規制が強化された「2024年問題」を受け、盛岡市や北上市の周辺が北東北の新たな物流拠点として注目されている。ここ数年、高まる需要に応えようと、物流施設の開業が相次ぐ。
東北自動車道の盛岡南インターから約4.7キロメートルの位置にある「プロロジスパーク盛岡」(矢巾町)は、昨年末に完成した。「3階建てで、延べ床面積約9万9千平方メートル。1区画最小1500坪から利用可能で、賃貸型の物流施設では東北地方最大級」とプロロジス社の中山博貴さんは語る。
物流業界は長年、運転手の長時間労働が問題とされてきた。労働基準法の改正で、今年4月から運転手の時間外労働を年960時間までにする規制がスタート。それまで東北6県の物流の拠点は仙台だったが、北東北の多くの地域がカバーできなくなった。
「ここから3時間以内に南は仙台、北は本州最北部まで到達可能だ。都市に隣接しているので働く人材も確保しやすい」と中山さんは語る。
建物内は、24時間体制の防災センターや寒冷地仕様の空調を完備し、温かみのあるデザインで、「ヘラルボニー」のアート作品も展示されている。「ここで働きたいと思えるオフィスビルのような環境にした」と中山さん。カフェテリアでは、無料WiFiがあり、コンビニも併設されている。
効率化の面でも工夫をした。各階にトラックが直接乗り付け、荷物の積み下ろしにかかる時間を省けるようにした。さらなる省力化のため、立体型仕分けロボットの内覧会を開くなどして、多くの企業の関心を呼んでいる。
「ネット通販が広がり、消費者になじみのある商品を取り扱う企業の入居や問い合わせが多い」と中山さん。すでに日本通運などが入居している。
プロロジス社は6月、金ケ崎町に「プロロジスパーク北上金ケ崎」も着工した。北上金ケ崎インターに隣接しており、秋田市へ約2時間で到達できるなど、日本海側へのアクセスのよさが強みだ。大和ハウス工業も北上市や花巻市で大規模な物流施設を相次いで開業させている。
自治体もこの好機を見逃さない。盛岡市は、盛岡南インター付近に物流業に特化した産業団地を整備中だ。28年ごろに工事を完了させる予定。市では、5千人の新たな雇用と580億円近い経済効果があると試算する。(伊藤恵里奈)