勝利投手となった北海学園大の高谷舟(右)と先発の工藤泰己

 (9日、全日本大学野球選手権1回戦 北海学園大5―4上武大)

 勝ちに飢えていた。最後まで、北海学園大の最速153キロ右腕・高谷舟(たかやしゅう)(4年、札幌日大)は闘志むき出しだった。

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 1点のリードの九回裏、1死から四球で走者を出した。すると、次打者に投じる前に、間合いを変えながら一塁へ3球連続の牽制(けんせい)。「いつか刺そうと思っていた」

 見事に走者を仕留めた後、対峙(たいじ)した打者は空振り三振に。三人で最終回を締め、バックスクリーンに向かってほえた。

 「これまで全然結果でアピールできていなかったけれど、腐らずにしっかりやってきた」

 高校時代は控え投手。大学では下級生から試合に起用されたが、けがもあって思うような活躍ができないままだった。今春はリーグ戦前に体調を崩した影響で、リリーフでの2登板にとどまった。

 そんななか、同じ右腕の工藤泰己(4年、北海)がめきめきと力を伸ばし、プロ注目の存在へと成長した。

 工藤とは小学生の頃から家族ぐるみで仲がよく、幼なじみのような間柄。中学時代は同じ軟式チームで切磋琢磨(せっさたくま)した。

 同じく高校で控え投手だった友が、「(大学で)すごい注目されて、僕も頑張らなきゃと思えた」。ときに一緒にトレーニングに励み、「勝ちたい」と思い続けた。

 全国大会出場の原動力となった工藤は、この日先発して四回途中4失点で降板。同点の七回2死満塁から3番手の高谷が好救援し、接戦をもぎとった。「こうやって一緒にやっているのも、何かの縁みたいな感じ」

 高谷にとって、工藤の存在は「ライバル」とは少し違うという。「一緒に成長して、チームを勝たせていけたら。仲のいい友達かな」

 試合終了の瞬間は、マウンドの高谷のもとへ工藤が真っ先に向かい、無邪気に抱きついた。互いの成長と変わらない友情が、チームにとって46年ぶりの勝利を引き寄せた。

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