軟式高校野球の選手や指導者も聖地へ――。阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で5月5日、全国から選抜された高校球児らによる交流試合が開かれる。軟式は例年夏、全国選手権大会が兵庫県内の別の球場で開催され、甲子園球場で試合をする機会がなかった。北海道からは東日本選抜チームに選手とコーチが出場、初となる女性審判委員も派遣され、歴史的な一戦に臨む。
交流試合は全国高校軟式野球選手権大会の70回を記念して開催される。全都道府県から選手が選抜され、北海道からは登別明日中等教育学校3年で捕手の尾崎佑成さんが選ばれ、東日本選抜の副主将を任される。監督の葛西健太郎さん(52)も選抜チームのコーチとして参加する。北海道科学大高3年で内野手の白浜琢磨さんも選ばれた。
登別明日は2023年夏に全国高校選手権でベスト4に進出し、24年9月の秋季全道大会では3年ぶりの優勝を果たした。
正捕手として活躍する尾崎さんは「野球をしている以上、甲子園は憧れの場所であり、聖地」と話す。軟式を選んだのは、小学生の頃から一緒に野球を続ける友人が軟式の強豪校である登別明日に進学したから。「自分が甲子園に立つことができるとは思わなかった」と、今回、選抜されたときの驚きを振り返る。しかし、同校から出場する選手は1人だけ。中継で見守るチームメートのためにも、勝利をめざす。
「副主将としては勝つことを意識してチームを作り、選手としては自分らしい全力プレーでチームに貢献したい」
葛西さんは「硬式も軟式も同じ高校野球。憧れの場所に立てる機会がこの先も増えていってほしい」と話した。
女性審判も聖地に立つ。
苫小牧中央・硬式野球部コーチの小嶋佳穂さん(31)が、甲子園で開催される日本高野連主催の試合で、女性初の審判を務める。
小嶋さんは小樽出身。父親の仁章(きみあき)さんは小樽潮陵の監督として、2004年春の全道大会で準優勝。北海道高野連専務理事も務めた。父の影響で、幼い頃から野球を始めた。小学4年から高校卒業まで札幌市の女子野球チーム「札幌ブレイク」に所属、その後「保健体育の先生になりたい」と進学した日本体育大でも野球を続けた。夢をかなえ、苫小牧中央高に着任、同校硬式野球部のコーチに就任した。
審判の資格を取ったのは、大学の先輩でもある同部監督の渡辺宏禎さんの「指導の幅が広がる」という助言がきっかけ。渡辺さんは小嶋さんの審判ぶりを「動きが速く、反応もいい」と評価する。
道内で高校野球の公式戦の審判を女性として初めて務め、2024年4月には全国審判講習会に女性として初めて参加した7人のうちの1人になった。仁章さんは「審判講習会自体、数十年と審判を務めて、やっと出られるかどうか」と驚き「時代の変化ですね」としみじみ話した。
小嶋さんが講習会で立った甲子園のグラウンドの感想は「とにかく広い」。声を出したときの反響が印象に残っているという。聖地・甲子園で審判として立つことについては「とても光栄なこと」。「常に選手のために全力で審判したい」と抱負を語った。
交流試合では他の審判と交代し、3イニング限定で臨む。「女性も野球に関わっていることを知ってもらうことで、後に続く女性指導者や審判が増えるとうれしい」。日頃の活動の成果を示し、後進に夢を与える大役も担う。