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廃止路線を引き継いだ「札幌ばんけい」バスの運行記念セレモニー。運転手(後列右から2人目)らが、バス停がある小学校に今春入学する子どもたちから花束を受け取った=2025年4月1日午前9時56分、札幌市南区真駒内、丸石伸一撮影
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 北海道が値上げの春を迎えた。JR北海道は5年半ぶりに値上げに踏み切り、札幌市は大半の公共施設の使用料などを値上げした。バスの減便で交通網も縮小。それでも経営が好転する兆しは見えない。道民にも企業にも厳しい春となる。

 JR北海道は1日から運賃を平均で7.6%値上げした。利用者へのインパクトが大きいのが、定期運賃の平均18.9%。1987年の民営化以降では過去2番目の値上げ率だ。

 高校生1カ月分の定期券の場合、札幌―手稲は7490円から8150円に、札幌―恵庭は1万670円から1万1860円になる。

 普通運賃も平均6.6%上がる。初乗り運賃は200円から210円になり、その結果、利用者の多いドル箱路線の札幌―新千歳空港は1150円から1230円になる。

 札幌から函館、釧路方面に向かう特急列車は1年前から自由席がなくなり、全席指定となっている。今回の値上げで札幌―函館は9440円から9770円に、札幌―帯広は7790円から8120円に、札幌―釧路は9990円から1万320円になった。

 来年3月のダイヤ改定以降は、札幌から旭川、稚内、北見、網走方面に向かう特急も全席指定になる予定。道内の特急列車の自由席が完全になくなれば、道民の負担はさらに増すことになる。

 JR北の運賃値上げは1996年と2019年に続いて3回目(消費税増税分を除く)。国鉄が分割民営化されてから3回も値上げしたのは全国のJRでも北海道のみだ。JR北は「高止まりしている燃料代や資材価格への対応、安全面や人材への投資などにあてる」とする。ただ、値上げによる増収分は年間37億円に過ぎず、23年度の単体営業赤字額の574億円を考えると、経営改善の「特効薬」とは言いがたい。

 北海道新幹線の札幌延伸は早くても38年度と8年遅れになったほか、確実にもうけが見込める札幌駅南口の再開発ビルの全面開業も建築費用がほぼ倍増し、6年遅れの34年度になる。長期経営ビジョンで掲げる「31年度には国の財政支援なしで純損益を黒字化する」という経営自立目標の達成は極めて厳しくなっている。

 値上げの波は鉄道にとどまらない。札幌市は1日から、人件費や燃料代、光熱費など物価上昇の影響を理由に、市内の文化・体育施設の観覧料や使用料を一斉に値上げした。「コスト増加分のみを反映した」(財政局)としており、年間7億円弱の収入増を見込む。

 値上げ率が75%と大きいのが観光スポットの札幌市時計台(中央区)。1998年に観覧料を設けて以来初の値上げで、一般観覧料は200円から350円になる。ただ、兵庫県から母娘で観光に来ていた女性(55)は「1千円台ならちゅうちょするけど、この価格ならそんなに高いとは思わない。せっかく来たので楽しみたい」と話すなど、観光客からはあまり批判の声はなかった。

 車利用者に影響するのが、J…

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