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記者会見で謝罪する松本市立病院の関係者。右端は臥雲義尚市長=2025年7月22日、長野県松本市、小山裕一撮影

 長野県の松本市立病院は22日、助産師が分娩(ぶんべん)の際の監視業務を怠り、新生児が仮死状態で生まれ、低酸素性虚血性脳症になる医療事故があったと発表した。病院側は医療ミスがあったと認めて謝罪し、分娩の受け入れを休止して体制を見直す考えを示した。

 発表によると、医療事故があったのは今年4月。県内に住む20代女性が陣痛で入院して出産した際、胎児の心拍モニターに異常波形が現れた。

 当初は軽度だったが、その後、中等度や高度の異常波形が何度も現れた。しかし、助産師2人が波形の判読をしなかったうえ、産科医師に報告せず、分娩を続けた。

 胎児の心拍数が低下したため、医師は自然分娩ではなく、吸引分娩に切り替えたものの、仮死状態で生まれ、その後、低酸素性虚血性脳症と診断された。

 記者会見した佐藤吉彦院長は「異常波形が現れた時点で、助産師が速やかに医師に報告し、吸引分娩などに踏み切っていれば、今回のような事態にならなかったと考えられる」と語った。

 2人の助産師は医師に報告しなかった理由について、「当初、胎児の心拍数が回復したため、大丈夫と判断した」と話しているという。

 低酸素性虚血性脳症は分娩の際、胎児の脳が酸素不足や血流不足になることで引き起こされる脳の障害で、重度の場合は長期的な後遺症を伴うことがある。病院によると、生まれた新生児は、今後も継続して病状を見守っていく必要がある状態という。

 記者会見に同席した臥雲義尚市長は「(被害者に対しては)今後起こりうる事案への対応を含めて、誠意を持って最大限の補償を行っていく。分娩体制の見直しについても真摯(しんし)に取り組んでいく」と述べた。

 7、8月に市立病院で出産を予定している人に対しては、他の医療機関を紹介し、9月以降についても様子を見ながら紹介を継続する可能性があるという。

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