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金沢医大の奨学金「釜石枠」で最初の看護師になった佐藤綺美さん=2025年4月30日、岩手県釜石市のせいてつ記念病院、東野真和撮影
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 金沢医科大学(石川県内灘町)看護学部が岩手県釜石市出身者に設けた奨学金制度「釜石枠」を利用して卒業した初めての看護師が、4月から釜石市内で働き始めた。医療従事者不足の同市を支援する制度で、後輩も続いている。

 金沢医大は東日本大震災前から、医療従事者確保に悩む釜石市に医師を派遣していた。看護学部生への「釜石枠」は2018年の市制施行80周年記念式典に招かれた金沢医大の理事長に、当時の野田武則市長が直談判したのがきっかけで21年から始まった。

 金沢医大の「釜石枠」の奨学金は年75万円で、釜石市分の年60万円と合わせると、ほぼ年間の授業料や諸経費をまかなえる。卒業後に釜石市で4年間、看護師として従事すれば返還しなくていい。

 初の「釜石枠」で看護師になったのは、小学2年生で震災を経験した佐藤綺美(あやみ)さん(22)。避難所で献身的に活動する看護師を見て「すごいな」とあこがれた。金沢医大で4年間学び、4月からせいてつ記念病院の内科で働いている。

 「この奨学金をもらわなければ同級生がいる金沢で就職していた」と打ち明けるが、「釜石では方言で患者さんとコミュニケーションが取れて楽しい」と、今は故郷で働く喜びを感じている。連日、先輩に指導を受けながら働く佐藤さんは「仕事が追いつかないときもあり、看護師不足を実感している。実習していた金沢医大病院はもっと人に余裕があった」。

 金沢医大には佐藤さん以後、各学年に1人ずつ奨学生がいる。4月30日に佐藤さんから表敬訪問を受けた小野共市長は「こういった制度を今後も広めていく必要がある」と話した。

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