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訪問看護サービスを受ける医療的ケア児(事件とは関係ありません)=2024年1月

 日常的なたんの吸引や、管から胃に直接栄養を入れる胃ろうなどの対応が必要な医療的ケア児は、全国に約2万人と推計される。医療的ケア児は医療の進歩を背景に増加傾向にあるが、支援は不十分と指摘する声も多い。

 今年1月、7歳の長女の人工呼吸器を外したとして、福岡市の40代の母親が殺人の疑いで逮捕された。

 当時の状況は不明だが、別の医療的ケア児の母親は「ギリギリの毎日。何かの拍子に、糸がぷつりと切れてしまったら明日は我が身」と話す。医療的ケア児の支援に詳しい埼玉医科大学総合医療センターの田村正徳名誉教授(小児科)に現状と課題を聞いた。

 ――事件をどう受け止めましたか。

 日本では医療的ケア児の介護はほとんどの家庭で母親が担います。人工呼吸器をつけた子の介護者のうち7割が夜中にたんの吸引などのために起き、睡眠時間は途切れ途切れでした。また、睡眠時間が5時間未満の人が5割を超えました。

 このお母さんがどの程度のサポートを受けられていたのかがわからない状況で、我々がお母さんを責めるのはおかしいと思います。

 ――人工呼吸器をつけている医療的ケア児の家族は子どもを一時的に訪問看護事業者に見てもらえるレスパイト事業を利用できます。利用できるのは、国の制度では1人あたり年間18万円まで、事件が起きた福岡市の場合は年間48時間までです。

 日本で訪問看護が利用できる時間は短いです。サービスとしては不十分と言わざるを得ないと思います。家族の睡眠時間を確保するため、少なくとも夜間に8時間の訪問看護を(日常的に)利用できるようにするべきだと思います。人工呼吸器をつける子どもを預かってくれる医療型短期入所施設も少ないです。

 ――家族の相談先はどんなと…

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