姫路城と高知城
雨の朝に混雑した電車に揺られていて、ふと、いつか船旅をして各地の名城を訪ねられたらと、現実を忘れて想像したことがないだろうか。青い空に白い雲。どこまでも広がる海。ざぶーん、ざぶーんと波の音。その海を滑るように進んでいく真っ白な船。その船に乗って旅をするイメージを思い描く瞬間は、電車でもみくちゃになっていても、つかの間の幸せを感じられる。
もみくちゃになっているときに真っ白な船を思い浮かべて、私もなんとか生きてきた。そんな私が先日、日本を代表する豪華客船、飛鳥Ⅱに乗る機会を得た。横浜港を出発して姫路、高知、宮崎を巡る旅の船中で、姫路城・高知城の魅力と見どころをお伝えする講演をすることになったのである。乗船の日に桟橋へ向かうと、これまで見たことがない巨大な客船が停泊していた。飛鳥Ⅱである。やさしい日差しを浴びて輝く船は、辛(つら)いときに想(おも)い描いた通りの夢の船である。スムーズに乗船は進み、厳格な避難訓練の後に、多くの人々に見送られて船は出航した。
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