【第83期A級順位戦2回戦】自戦記・千田翔太

▲(先手)九段 佐藤天彦(1勝0敗) △(後手)八段 千田翔太(1勝0敗)

再出発

 身の振り方を考えた数年であった。AIの浸透、将棋の進歩、そして実力向上の道を往(ゆ)くスターの登場。若手時代に描いたビジョンは実現した。コンピューター将棋の普及とAIを活用して棋力を伸ばすことに軸足を置く私にとって願ったり叶(かな)ったりの未来が訪れているのだろう。けれども、それは同時に私が一定の役割を果たしたことを表す。激動の時代、その渦中に身を置き続けた過去と現状に想(おも)いを巡らせると、穏やかな喜びとともに寂寥(せきりょう)を感じる。私の20代はAIと人間の付き合いの中にあった。

自戦記を寄稿してくれた千田翔太八段=2024年7月24日午前9時56分、東京都渋谷区の将棋会館、北野新太撮影

 今後の活動方針について見直す日が来ることは想定していた。しかし、実際に迎えてみると厳しかった。従前の方針をとったとして棋界にどのような影響を与えられるのか。自身が強くなることの意義とは――。

 私を将棋の世界に引き戻した…

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