【動画】戦後80年 終戦の日の千鳥ケ淵戦没墓苑=友永翔大撮影

 8月15日は、戦後80年の終戦の日。日本社会から戦争の記憶が遠ざかる一方、世界中で戦火は絶えず、多くの人が毎日のように犠牲になっています。いま、何を思い、平和を願うのか。各地の営みを伝えます。

  • まとめて知る戦争、なぜ開戦?被害は? 戦後80年、ポイントを解説
  • 【3社合同企画】被爆者3564人アンケート
  • 「エノラ・ゲイの悲劇」で踊った高校時代 被爆2世・吉川晃司の覚悟

■■靖国神社で、千鳥ケ淵で■■

08:00

「語り継ぐ責任感じる」平和の祈りを捧げる集まりで

 東京都千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑で平和の祈りを捧げるキリスト教徒の集まりの中にいた北原恵美さん(77)は「世界中で戦争が起きている戦後80年の夏、一人ひとりができることを確認しにきた」と語った。

 両親は旧満州(現中国東北部)からの引き揚げ者だった。満州で徴兵されたという父は、戦争経験を多くは語らなかったが、2016年に98歳で亡くなるまでの最後の10年間で思い出を話し始めたという。ソ連軍の捕虜になり、部隊の仲間26人で夜陰に紛れて辛くも脱走。「ボロ雑巾のようになって家族の元へ戻った。地獄の中の奇跡だった」と話した。妊娠中だった母は、帰国する船の中で流産したそうだ。

 「両親の経験は、本当に苦しかったと思う。でも同時に、戦後世代の私は彼らの侵略者・加害者としての側面も感じざるを得ませんでした」。両親が亡くなったいま、「経験を聞き書きしておかなかったことが本当に残念」と悔やむ。3人の子ども、5人の孫に、戦争経験をほとんど伝えられていないと話す。「戦争経験者が減り、最近の社会の雰囲気が変わっていく危機感がある。いま本当に、語り継ぐ責任をしみじみ感じています」

千鳥ケ淵戦没者墓苑で遺骨を納める六角堂に手を合わせる参拝者=2025年8月15日午前7時12分、東京都千代田区、平川仁撮影

07:55

小泉農水相、小林鷹之氏ら靖国神社参拝

 小泉進次郎農林水産相は、東京・九段北の靖国神社に参拝した。約15分かけて参拝したが、記者団の取材には応じなかった。その後、自民党の小林鷹之元経済安全保障相や萩生田光一元政調会長らも参拝した。

 小林氏は記者団の取材に、「祖父が中国で戦死し、遺族の一人として参拝した。尊い犠牲になられたご英霊に対し、心から哀悼の誠を捧げた。国、国民、そして平和を守り抜くために全力を尽くす覚悟を新たにした」と述べた。衆院議員の肩書で、私費で玉串料を納めたという。

靖国神社を参拝する小泉進次郎農水相=2025年8月15日午前7時53分、東京都千代田区、金居達朗撮影
靖国神社を参拝し取材に応じる小林鷹之・元経済安保相=2025年8月15日午前8時5分、東京都千代田区、金居達朗撮影

07:00

「考え続けたい」

 身元の分からない戦没者ら約37万人の遺骨が眠る東京都千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑では、午前7時の開門を前に、30人近い参拝者が列をつくった。

 並んでいた都内の女性(70)は、靖国神社を参拝した後に訪れた。約20年間、終戦の日の参拝を続けている。1923年生まれの父は、日本軍の工兵として千葉県で終戦を迎えた。戦後、「級友6人が戦死した」「あと1カ月終戦が遅ければ、本土でも戦闘が始まり、死んでいたかもしれない」などと語ったことがある。

 親を通して戦争が身近にあったという女性は、「本当に大変な思いをされた方々がいたことを考え続けたい」と話し、納骨堂の前で手を合わせた。

千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花し、手を合わせる人たち=2025年8月15日午前8時55分、東京都千代田区、友永翔大撮影

06:00

開門前から300人の列

 東京・九段の靖国神社が開門した。開門前から300人以上の参拝者の長い列ができた。

 最前列に並んでいた福島県の会社員男性(53)は昨年に続いて靖国神社で手を合わせた。祖父は中国などで従軍したが詳しく戦争体験を聞けなかった。2年前に鹿児島県南九州市の「知覧特攻平和会館」を訪れて以来、各地の戦跡や戦争関連の資料館に足を運ぶ。

 「残された世代ができるのは過去に学ぶこと。資料や映像を通じ、戦争を繰り返さぬよう教訓を引き出したい」と話した。

【動画】戦後80年の終戦の日 早朝の靖国神社の様子=金居達朗撮影

80回目の終戦の日を迎え、靖国神社を参拝する人たち=2025年8月15日午前7時34分、東京都千代田区、金居達朗撮影

■■全国各地で■■

10:00

「核のない未来をめざし声を上げ続けていきましょう」

 広島市中区の平和記念公園では、原爆や戦争で亡くなった人々を慰霊し、戦争のない世界の実現を願って「平和の鐘」をつく行事があった。主催する広島ユネスコ協会の会員や高校生らが参加した。

 広島大付属高校1年の河田実桜さんは「戦争で苦しんだ人々の思いを忘れてはいけません。その思いを伝えていくことが、私たちの使命ではないでしょうか」とスピーチ。高校生平和大使のノートルダム清心高校2年の下田梨央さんは「私たち若者が、被爆者の思いを引き継ぎ、核のない未来をめざして声を上げ続けていきましょう」と訴えた。

 参加者は黙禱(もくとう)後、次々と鐘を鳴らしていった。

恒久平和を願い、高校生が「平和の鐘」を鳴らした=2025年8月15日午前10時26分、広島市中区の平和記念公園、柳川迅撮影

■■世界で■■

10:30

韓国・李大統領「過去を直視し、未来に進む知恵を」

 韓国の李在明(イジェミョン)大統領が日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典で演説し、日韓関係について「過去を直視し、未来に進む知恵を発揮しなければならない時だ」と述べた。

 李氏は「日本との関係を確立する問題は常に重要で難しい課題だった」とし、依然として過去の問題で苦痛を受けている人たちがいると指摘した。一方で日本は隣人であり、経済発展において切り離せない重要なパートナーだとも指摘。「両国が信頼を基盤に未来のために協力するとき、時代の挑戦も十分に乗り越えられるだろう」とした。

 そのうえで、日本と未来志向的な協力の道を模索していくとしたが、「日本政府が過去の痛ましい歴史を直視し、両国間の信頼が損なわれることがないよう努力してくれるものと期待する」と釘も刺した。

共有
Exit mobile version