「日本の米は世界一♪」「米(マイ)!、米(マイ)!」――。スポットライトで照らし出されたライブハウスのステージで、日本語の歌が響く。
米テキサス州オースティンで3月に開かれた音楽やテクノロジーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」。世界中からアーティストが集まるこの全米イベントで、日本から来た若手バンドら計8組が夜通し歌い続けた。ここから、日本のアーティストを世界に売り出したい。そんな思いから日本の音楽関連会社などが企画した。
跳びはねながら聞いていたマリア・ホセさん(22)は「日本のアニメは大好きだけど、音楽は聞いたことがなく、こんなにクールだとは思わなかった。もっと色々な曲を聴いてみたい」。
アニメやゲームほどの知名度はなかった日本の音楽。アーティストが所属する音楽プロダクション「LD&K」副社長の菅原隆文さんは「言葉の壁があったと言われるが、今はAI(人工知能)でさっと訳をつけてユーチューブで配信すれば乗り越えられる。本当の壁は音楽業界でまとまって、海外を志向してこなかったことだった」と語る。
それが近年、海外に積極的に売り込もうとしていると実感する。菅原さんはいう。「国は動きだし、トヨタ自動車のような大企業も若手アーティストの世界進出を支えてくれるようになった。チーム日本としてまとまれるようになってきた」
SXSWで最大の盛り上がりを見せていたのが、日本のゲームだ。ゲームクリエーターの小島秀夫監督が6月に発売予定のプレイステーション(PS)5用ソフト「デス・ストランディング2」の最新の予告動画を披露すると、大歓声があがった。作品中に出てくる音楽のオーケストラによる世界公演や、ゲームのキャラクターがつけている腕時計を併せて売り出すことも発表。ゲームそのものから作品中の音楽、そして各種グッズの販売と、「ビジネスの好循環」を作り出そうとしているようだった。
世界を熱狂させる日本のコンテンツ。国を挙げて世界に売り出す動きがここに来て加速している。
まず動いたのは「民」だ。経団連は2022年、コンテンツ分野を議論する専門の組織「クリエイティブエコノミー委員会」を立ち上げた。
これまで経団連は、鉄鋼や造船などの重厚長大産業、自動車や家電など日本のお家芸とされていたものづくり産業への政策づくりに注力していた。ただ、新興国の追い上げもあり、こうした産業の競争力は低下。「気がつけば日本のコンテンツ産業は重要な地位を占めていた」(経団連関係者)という。
委員会の委員長を務めるソニ…