女王卑弥呼(ひみこ)が治めた邪馬台国の有力候補地、奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡(国史跡)で出土した3世紀前半とみられる犬の骨から、当時の姿が復元された。市教育委員会と市纒向学研究センターが22日発表した。「纒向犬」は1歳半以上のメスだったとみられ、茶とグレーの色違いの2匹の模型を製作した。骨格から精密に復元したのは、弥生時代の集落跡で知られる亀井遺跡(大阪府八尾市など)の弥生犬に次いで全国2例目という。
犬の骨は2015年1月、3世紀前半では国内最大級の大型建物跡がある居館エリアの区画溝で見つかった。大型建物が建つ直前の時期で、ほぼ1体分が出土した。センターは18年に復元方針を決め、考古学や解剖学、進化生物学などの学際的な研究チームを組織。骨の3次元レプリカをつくって骨格を組み上げ、足りない部分は亀井遺跡の犬の骨を参考に復元した。
纒向犬は体高約48センチ、体長約58センチ。現在の紀州犬や四国犬のメスと同程度の大きさで、柴犬(しばいぬ)より一回り大きい。弥生犬と比べると頭が小さく、足と足先が長い華奢(きゃしゃ)な体格だったとみられる。こうした特徴は弥生時代の犬の系譜に位置付けることが難しく、中国大陸・朝鮮半島から連れてこられた可能性もある。毛色は不明だが、前後の時代の犬の遺伝情報(ゲノム)から推定したという。
センターの寺沢薫所長(考古学)は「卑弥呼と時間と空間を共有していた犬だった可能性が極めて高い。復元の精度も高く、日本の犬の歴史を研究するうえで学術的にも価値がある」と話す。
復元模型は23日~9月28日、桜井市立埋蔵文化財センターで展示する。纒向犬の愛称も募集する。応募用紙に愛称とその理由などを記入し、6月30日までに埋蔵文化財センターなどに設ける応募箱に投函(とうかん)する。1人1点まで。郵送やインターネットでの応募も可。詳しくは市纒向学研究センター(0744・45・0590)へ。
「卑弥呼の王宮」エリアで出土
奈良県桜井市の纒向(まきむ…