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 和歌山県の南部、田辺市の湾に天然記念物の「神島」という小島がある。博物学や民俗学に功績を残した南方熊楠(1867~1941)が生物学上の重要性を説き、保護に尽くした島だ。この島で1929年に熊楠が昭和天皇を案内した際の映像が、昨年見つかった。

 フロックコートを着ていかめしい顔をした男性が浜辺で昭和天皇を迎え、向かいあってからは目元を緩めて何かを話している。60代の熊楠だ。

写真・図版
動画「天皇陛下関西行幸」の中で、フロックコートを着て立つ南方熊楠=国立映画アーカイブ提供

 熊楠は菌類や粘菌の研究で名をはせた世界的博物学者で「知の巨人」として知られるが、意外にも動く姿はほぼ残されていない。

 新たに見つかった映像は国立映画アーカイブと国立情報学研究所が公開するウェブサイト「フィルムは記録する―国立映画アーカイブ歴史映像ポータル―」の「天皇陛下関西行幸」の一部。製作した文部省(当時)から移管されていたものがデジタル化され、昨年秋に公開された。昭和天皇が関西を歴訪した際の映像に、熊楠が神島で昭和天皇と話す様子などが映っていた(https://filmisadocument.jp/films/view/206)。熊楠は11分過ぎに登場する。

■研究者にも知られていなかっ…

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