京都大の茶本健司特定教授。右の超解像顕微鏡はがん免疫総合研究センター内で共同利用している=京都市

現場へ! 医学研究 日本の実相(2)

 円弧と直線を組み合わせた白い建物は、京都大キャンパスでひときわ目立つ。

 2020年設立のがん免疫総合研究センターの拠点だ。がん治療薬「オプジーボ」を製造販売する米ブリストルマイヤーズスクイブ社から55億円の寄付や国の支援を受け、昨年秋に開所した。

 らせん階段が各階をつなぎ、広いフロアに実験台が並ぶ。1億円を超す最先端機器もそろう。

 「設備に加え、専門家が集まっているので共同研究もしやすく恵まれている」と塚本博丈特定准教授(49)は話す。

 がん免疫療法の副反応の仕組みの一端を解明する論文を4月に発表した。約3年かかり実験結果を示す17の図をまとめた。「でも失敗して表に出てこない実験がもっとある」

京都大のがん免疫総合研究センター。広いフロアに実験台が並ぶ=京都市

研究費・人件費が高騰、円安の影響も

 研究費用は高騰している。物価が上がり、人件費も上がった。機器や試薬などは輸入品が多く、円安の影響は大きい。特定のたんぱく質にくっつく「抗体」は多種使うが、1本5万円以上するものもあるという。

 茶本健司特定教授(47)は、著名な雑誌に発表した論文に、1匹1万~2万円する飼育期間が1年以上の「老化マウス」が300~500匹必要だったと振り返る。

 1個ずつの細胞の遺伝子の働…

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