Smiley face
写真・図版
ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり経済研究部常務理事=2024年7月24日午後0時28分、東京都千代田区、岡田玄撮影

 欧州連合(EU)諸国で、自国の利益を優先するよう求める「極右」や「右派」が勢いを増している。この動きは、欧州経済にどのような影響を与えるのか。ニッセイ基礎研究所のエコノミスト、伊藤さゆりさんに聞いた。

  • 「極右」レッテルが見誤らせる欧州政治 「底流にあるのは階級闘争」

 5年ごとに欧州議会選がありますが、この5年で、欧州は新型コロナやウクライナ戦争など複数の危機に見舞われました。いまはインフレ率も落ち着いていますが、大きな傷を負った庶民の購買力は回復していません。英仏などの選挙結果は、その不満が政権与党への厳しい批判として現れたものに見えます。

 現在の欧州には、産業の競争力に深刻な課題を抱えているという危機感があります。気候問題に危機意識を持つ欧州議会は、産業と環境を両立させる「グリーンディール」を推進し、関連法を可決させてきました。しかし、この5年で世界が様変わりし、前提が崩れてしまいました。

 例えば、長期契約による安価なロシアの天然ガスが利用できなくなり、エネルギーコストは上昇しました。欧州の産業のハブ、ドイツにとっては、恩恵が弱みに変わってしまった。

EUは「足かせ」なのか

 また、米中対立が先鋭化し…

共有