法務省=東京都千代田区

 悪質な交通事故の処罰のあり方に関して、鈴木馨祐法相は10日、危険運転致死傷罪の見直しを法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。要件があいまいで適用のハードルが高いとの声がある危険運転罪の要件について、運転手のアルコール濃度や超過速度の数値基準を設けることの可否が焦点になる。

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 自動車運転死傷処罰法に基づく危険運転罪は、飲酒や高速度運転、赤信号無視など8類型の運転による死傷事故のうち、特に悪質性が高い運転を「故意犯」として処罰するもの。法定刑の上限は懲役20年で、一般的な死傷事故に適用される過失運転致死傷罪(懲役7年)を大幅に上回る。

 ただ、事故遺族らの間には、「アルコールの影響により正常な運転が困難」「進行を制御することが困難な高速度」などの要件があいまいだとの指摘や、危険性の高い運転なのに適用されていないとする声がある。検察がいったん過失運転罪として起訴した後、再捜査を経て危険運転罪に訴因変更するケースも相次いでいる。

 法務省は昨年2月に有識者検討会を設け、見直しの論点ついて議論を開始。昨年11月にまとめた報告書では、運転手の呼気、血中のアルコール濃度や、超過速度について数値基準を新設することが考えられると提言した。また、いわゆる「ドリフト走行」を同罪の対象に加えることも検討課題とした。

 法制審への諮問を前に、飲酒・ひき逃げ事故の遺族らの団体は1月、鈴木法相を訪ね、要望書を手渡した。要望書は、アルコール濃度の数値基準を設けることにより、基準を下回っただけで同罪が適用できなくなるようなことがないよう求めた。

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