悪質な交通事故を「故意犯」として処罰する危険運転致死傷罪の見直しの議論が法制審議会(法相の諮問機関)で31日に始まるのを前に、交通事故の遺族らが28日、法務省と法制審あての要望書を提出した。飲酒や高速度運転について、法制審で論点となる体内のアルコール濃度や超過速度の数値基準の新設を要請。さらに数値を下回っても危険運転罪で処罰できるような制度設計を求めた。
要望書の提出にあたり、宇都宮市や大分市などで起きた高速度運転の車による事故の遺族が東京都内で記者会見。大分市で2021年、時速194キロで交差点に進入した車に衝突されて亡くなった小柳憲さん(当時50)の姉、長文恵さんは、数値基準の新設を求めた上で、「基準を満たさなければ全部処罰できなくなってしまうと、おかしなことになる」と語り、「アルコールの影響により正常な運転が困難」「進行を制御することが困難な高速度」という現状の要件も維持するよう訴えた。
危険運転罪をめぐっては、法務省の有識者検討会での議論を踏まえて法制審に見直しが諮問され、31日に第1回の会合が開かれる。昨年11月に有識者検討会がまとめた報告書は、飲酒や高速度運転について、運転手の呼気、血中のアルコール濃度や、超過速度について数値基準を設けることが考えられると提言した。