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 ヒトiPS細胞から精子や卵子になる手前の細胞を大量につくる方法を、京都大の斎藤通紀教授(細胞生物学)らの研究グループが開発した。細胞数を100億倍以上に安定して増やせるため、試験管内で精子や卵子をつくる取り組みが加速しそうだ。将来的に研究がさらに進めば、皮膚や血液など体の一部から精子や卵子をつくり受精させることも技術上は可能になる。

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 論文が20日付の英科学誌ネイチャー電子版(https://doi.org/10.1038/s41586-024-07526-6別ウインドウで開きます)で発表される。精子や卵子ができる基礎的な仕組みの解明や、不妊症や遺伝病の治療法開発に期待がかかる。一方、生命倫理上の議論も速やかに求められる。

 ヒトの体内では受精卵になってから2週間後に、その次世代の精子や卵子のもとになる「始原生殖細胞」ができ、6~10週間後に精巣や卵巣で、精子、卵子になる手前の「前精原細胞」「卵原細胞」に分化していく。

 斎藤さんらは2015年、ヒトiPS細胞由来の始原生殖細胞をつくることに成功。今回、ヒトの体内でもつくられるBMP2というたんぱく質をこの細胞に加えて培養する方法で、前精原細胞と卵原細胞をつくった。

 4カ月ほど培養すれば細胞数を100億倍以上に増やせるという。遺伝子の働き方などを解析し、実際の体内で起きているのと似た過程を再現できていることも確認した。

 斎藤さんらはこれまで、マウスの生殖器官の細胞と合わせる方法で、卵原細胞をつくることに成功していた。だがこの方法だと、マウス細胞から多様な成分が分泌されるため、卵原細胞ができる詳しい仕組みがわからず、作製の効率も悪いのが課題だった。

 今回の手法では、大量にヒトの前精原細胞と卵原細胞をつくることができるため、それらを材料とした実験がしやすくなり、生殖細胞の研究が一気に進む可能性がある。

 斎藤さんは「ヒトの生殖細胞…

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