大きな声をかけながら、買い手の反応をみるせり人=2025年4月30日午前7時3分、東京都江東区の都中央卸売市場豊洲市場

 日々変化する青果物の価格。値動きを見るのに役立つのが、卸売市場での価格です。威勢の良いかけ声と共に取引される「せり」のイメージが強いのですが、せりが占める割合は現在はごくわずか。どのように値が決まっていくのか、卸売市場を訪ねました。

 徳島のニンジン、神奈川のキャベツ、福岡のイチゴ。見学者デッキからは、野菜や果物を詰めた段ボールがずらりと並ぶ卸売場が見渡せる。

全国各地から集められた青果物が並ぶ、東京都中央卸売市場豊洲市場青果棟の卸売場=2025年4月30日午前6時48分、東京都江東区

 東京都江東区にある都中央卸売市場豊洲市場の青果棟。土曜日の朝、6時半。せりの開始と共に、ここで一般見学者向けのせり解説が始まった。

 見学者の真下で、木の芽やワサビなどが次々とせりにかけられていく。「買い手は事前に商品を一通り見て、何を買うかチェックしています」

ワサビをせりにかける東京シティ青果の社員=2025年4月30日午前6時41分、東京都江東区の都中央卸売市場豊洲市場

 マイクを持って話しているのは、東京シティ青果の役員。全国から青果物を市場に集め、買い手である仲卸業者らに売る卸売業者だ。解説会は、4、5月の毎土曜日に期間限定で同社が開いている。

 「解説があればせりで何が行われているか分かりやすくなる。全国から集まる大量の荷を多様なニーズに応じて迅速にさばく卸売市場の役割を知っていただけたら」と森竜哉社長が企画の狙いを話す。

せりから相対へ

 卸売市場は、商品が公正に取引されるよう、国や都道府県が認めて設けられる。需給を反映した価格形成の機能を担い、毎日の取引数量や商品の価格が公表される。

 ただ現在、青果や水産物の取引でせりは主流ではない。農林水産省によると、全国の中央卸売市場における青果の取引で、せりが占める割合は1割未満。9割以上は、売り手である卸売業者と、仲卸業者ら買い手との1対1で数量と価格を決める「相対」という方式で取引される。

 背景には大手量販店の増加が…

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