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被爆してやけどした右腕を触る桑崎英子さん=2025年4月14日、長崎市田上2丁目、小川崇撮影
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■■ナガサキノート 桑崎英子さん=1929年生まれ

 「上手に思い出して、なんとか筋道でも立つような話ならよいですけど」

 今年4月、長崎市の特別養護老人ホーム。元小学校教諭の桑崎英子さん(95)は、ホームを訪れた元教員仲間らを前に、8月9日の被爆体験を語り始めた。

 桑崎さんは、当時県立長崎高等女学校の4年生。15歳だった。爆心地から約1.2キロの三菱兵器茂里町工場に学徒動員され、魚雷の深度目盛りをつくっていたという。

 午前11時2分。工場の2階で、同級生たちと部品を削る作業の順番を待っていた。

 何かが光ったと思うが、あまり思い出せない。

 気づいたときには、一緒にいた同級生たちはいなかった。名前を呼ぶと、一人が返事をしてくれた。数日前に広島で新型爆弾が落とされたと、人づてに聞いていた。「その爆弾だったのかも」

 床板に穴ができ、下を見るとけが人がいた。その穴から飛び降りて、近くの防空壕(ごう)へ逃げることにした。

「もうそんな焦げたら死ぬのかな」

 歩いて向かう途中、背中がピ…

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