原爆と戦争への怒りと憎しみを込め、広島を拠点に反戦平和と核廃絶を訴える数々の作品を残した詩画人の四國五郎(1924~2014)。生誕100年、没後10年にあたる今年、その生き様と思いを伝えたいと、ミュージシャンで俳優の趙博(チョウバク)さん(67)=大阪市生野区=が一人芝居の全国巡回公演を始めた。弟を原爆で亡くし、自らはシベリア抑留を経験した四國五郎。世界で戦火が絶えない今こそ彼の訴えを心にとどめて欲しいと演じている。
《ひろしまの子は、あの日のままです(中略)/その瞳に こたえてやってください/あなたの目で うなずき返してやってください/ひろしまの子に わかるように/けっして再び あやまちはくり返さないと!/けっして許さないと!》
8月2日夜、神戸学生青年センター(神戸市)に趙さんの熱のこもった声が響いた。四國五郎が1980年8月、広島での原水爆禁止世界大会で読み上げたという自作の詩の一節だ。
四國五郎は徴兵されて旧満州(中国東北部)で従軍し、敗戦後は旧ソ連のシベリアに3年余り抑留された。復員して広島に帰った48年11月、母親から3つ下の弟・直登(なおと)が原爆で死んだことを初めて知らされた。被爆から3週間後、18歳だった。
弟は死の直前まで日記を書き残していた。8月6日の欄には「広島大空襲さる」とあり、最後はゆがんだ字で記した「学校へ行くのを中止」で途切れていた。
弟の日記を読みふけって夜明…