広島市の原爆死没者名簿に、昨年8月6日以降に死亡が確認された被爆者の名前を書き加える作業が2日、広島市役所で始まった。名簿は今年8月6日の平和記念式典で、平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑に納められる。
昨年まで35回、記帳を担当した池亀和子さんが昨年8月16日に82歳で亡くなり、後任に被爆者の大川純子さん(83)が就いた。記帳を委託するようになった1969年以降では15人目の記帳者で、初めて元市職員以外から選ばれた。
大川さんは3歳の時に宇品町(広島市南区)で被爆。「平和に対する思いが強くなり、被爆者として何かをしたいという気持ちがあった」と話す。
この日は25年続けて担当する中本信子さん(82)とともに名簿に向かい、亡くなった被爆者の名前と死亡年月日、年齢を筆で記していった。8月5日まで続ける。
池亀さんの名前も今年、名簿に記される。昨年まで、ともに記帳を続けた中本さんは「使命感の強い尊敬する人だった」と話した。池亀さんの名前を書く機会が巡ってきた場合は、「今までお世話になりましたという気持ちをこめて、一字一字書きたい」と語った。
市によると、名簿は昨年の奉納時点で計129冊で、34万4319人の名前が記されている。6月2日現在で2222人の死亡が新たに確認されたという。名簿のうち1冊は氏名のわからない犠牲者のために「氏名不詳者多数」とだけ記されている。別の1冊には遺族が希望した長崎での被爆者13人の名が記されている。
長崎市では、同様に死没者名簿へ名前を記す「筆耕」が5日から始まる。