日本列島で1万年に1回起きてきた巨大噴火(破局噴火)の影響を受ける場所で原発を動かしていいのか――。

 27日に控訴審判決があった九州電力川内原発(鹿児島県)をめぐる行政訴訟で問われたのは、原発の立地のあり方そのものだった。

 九州には巨大噴火により広範囲を火砕流が襲った痕跡がいくつもある。鹿児島湾やシラス台地をつくった姶良(あいら)カルデラ(約3万年前)や、南北25キロに及ぶ熊本県の阿蘇カルデラ(約9万年前)はその例で、川内原発は火砕流が届きかねない場所にある。

 火砕流は、高温の火山灰や火山ガスが一気に流れ下る現象で、設計で対処できない。このため、東京電力福島第一原発事故を受けてできた原発の新規制基準では、火砕流が届く可能性があるなら「立地不適」として運転を認めないことになっている。

 ただ、原子力規制委員会は2014年に川内原発の再稼働に必要な許可を出した。

 巨大噴火の可能性は「十分に小さい」と判断したためで、裁判ではその妥当性が争われてきた。

 この日の福岡高裁判決は、規制委の判断に問題はなかったとし、許可の取り消しを求めた原告側の訴えを退けた。

 巨大噴火の具体的な可能性が示されているわけでなく、必要な手順を踏んでいることから、規制委の審査に「看過しがたい過誤欠落があったとは認められない」とした。

 これは四国電力伊方原発をめぐる1992年の最高裁判決の枠組みを踏襲したものといえる。国の審査の専門性を尊重し、手続きに不合理な点がないかを重視した。

 この裁判の控訴審は、火山対策の基準づくりや審査に携わった規制委の職員が、初めて証人として法廷に立った点でも注目された。

法廷で規制庁幹部から出た言葉

 傍聴していて、耳を疑った場面がある。

 経済産業省出身で、原子力規制庁で部長や技監を務めた桜田道夫氏が、原告側の弁護士から尋問を受けていた。

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 「一般的な施設と原発の安全を同列に考えているということですか」

 こう尋ねるられた桜田氏は、語気を強めてこう断言した。

 「同列に考えてはいけないという理屈が私にはわかりません」

 言うまでもなく原発は、一般…

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